「破滅」の向こう側

燃え盛る業火に包まれたバスが先頭から大地に突っ込み轟音をあげた時、暁美ほむらは自らが破滅している事を識って、声にならない声を上げた。

ほむらの悲しみと怒りが心底「やり場のない」ものであったのは、自らの破滅が「闘うことすら許されない」形で訪れたことにあった。
それは前兆があったにせよ常にほむらの心の死角に慎重に回り込み、暁美ほむらを形作ってきた要因のすべてを悉く音もなく奪っていったのである。
「つまりは、もう魔法少女でさえないって訳?」

ほむらは自らの破滅を、強大な魔獣との闘いの果てに訪れるものなのだろうと予想していた。魔女のいたかつての世界でいうとワルプルギスの夜のような勝ち目のない敵に当たり、そして力尽きるのであろう、と。
その時を迎える覚悟はほむらにはあったのだ。

しかし、実際に自分に訪れた破滅はもっと「拍子抜けするほどあっけない」ものであった。それは唐突でありながら綿密で、軽薄でありながら厳然としたものだった。あまりの意外性にほむらは涙を流す事さえできなかった。

この世に絶望を抱いたことがない、などという人間はおらず、
また死は全ての人に平等に訪れるが、完全なる破滅というものが如何なるものであるかを生涯の中で識る機会のある人間は限られている。
そういう意味では暁美ほむらは確かに特殊な部類の人間であった。

ただしほむらが「特異の中の特異」であった由縁は、この期に及んで尚彼女が心中である種の客観性を保ち続けていたことにある。
すなわち、「この破滅を招き入れた」自分の心の中にある感情は何か?を探索し続けたのである。
これはほむらが闘いの中で身につけた客観性であった。ほむらは自分の言動の責を、全て自分が負うと決意を固めることによってのみ生きてきた人間である。そこから微かではあるが完全なる破滅といえども一つの状態にすぎない、という人には持ちえない視点が生まれた。

意識は既に失われ、別の空間にほむらは降り立った。
「真実なんて知りたくもないはずなのに」
聞き覚えのある感情のない声がほむらの耳に入ってきた。

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