まどか最深の懸案

帰国した鹿目まどかにとって、最も気になる事は「なぜ、ほむらちゃんとさやかちゃんは仲が悪いのか?」ということである。

かなりの変わり者であるものの物静かで他人との諍いを嫌い、人の気持ちに敏感な暁美ほむらと、幼い頃から自分のことをよくしっている美樹さやかは共に自分とは近い間柄ではあるが、実際にはこの二人には明らかな精神的距離があった。
互いが互いを寄せ付けようとしないのだ。
この溝の深さはたとえまどかが二人の間に入っても消える事はなかった。そしてクラスの誰に聞いても、どうしてこうなったのかという原因については皆首をかしげるばかりである。

ある日、さやかがほむらに発作的に殴りかかったがほむらが押さえ込んだために大事にはならなかったらしい、という噂を聞き及んでまどかの心配は頂点に達した。
「私なんかがどーにかできる事じゃないのかもしれないけど。。」
と、自分の正体を識るすべのないまどかは想う。
とにかく、ほむらがどういう気持ちでさやかに接しているのか、これについてほむらは自分が訊けば応えてくれるはず、という予測がまどかにはあった。

ほむらと共に下校したまどかは意を決して問う。
「ほむらちゃん、あのね。。どうしてもほむらちゃんに訊きたいことがあるんだけど。」
「なにかしら。」
微笑を浮かべて、ほむらは立ち止まった。

「あの。。さやかちゃんのことなんだけど。。どーしてほむらちゃんとさやかちゃんは仲良くできないの?」
まどかは言葉を選んで訊き方を色々事前に考えていたが、最終的に選択したのはこのような質問である。
この問いに対して応えるのに、ほむらは実に長い沈黙を要した。

ほむらの目には今、まどかの目には見えないものが見えていた。
彼女の心の様相に応じてどこからともなく姿を顕す偽街の子供達ーヒガミとネクラとガンコの3人ーである。

「随分とムリをなさるから、こんな風にまた追い詰められるのだわ」とネクラが云う。
「信じる道を行きましょう。雑音はゴミ箱に捨てて」とガンコが云う。
「ホントに成長できたのかしらできるのかしら」とヒガミが云う。
こうした人形どもの囁きにほむらは心を奪われる事はない。

しかし、自分を涙ぐみながらじっと見つめるまどかは別だった。
ほむらは、とうとう覚悟を決めざるを得ない。
まどかを見つめ返しながら、ほむらは静かに口を開いた。
「私はきっと、あの子が羨ましいのよ。」

長い沈黙の後に発せられたほむらの応えはまどかにとって世にも意外なものであったが、驚くべきことにまどかはその一言で全てを納得したような気がしたのだ。
母性の権化であるまどかの心は、ほむらが仄暗い荒野のような光景を常に心に抱えていることを見抜いていた。
そして、何故かほむらはそこから脱出することはないのだ。
それは、幼さの残るまどかにはまだわからない「宿命」と呼ばれる類のことがらだった。
ともあれ、まどかはほむらのその一言を聴いてただ、
「うん、わかった」と言った。

まどかの発した一言にほむらは、救われたような気になった。
いつの間にか、あの3人の子供達の姿はもう見えなくなっていた。

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