偽街の子供達、語る

不意に襲われた感情の奔流の赴くままに悪魔の姿となった暁美ほむらは、見滝原市を流れる河の穏やかな流れと意識を同調している。
今のほむらには、彼女に相対することのできる「敵」というべき存在はない。だから、その力はひたすら持て余されていた。

そんなほむらを、からかうためなのかそれとも慰めるためなのかはわからないが、どこからかぞろぞろと集まってきたのはやはり偽街の子供達である。

「あらあら、あのデキソコナイ様がずいぶんとご立派な姿になっておられる」とワルクチが云う。

「これならどこへ出しても恥ずかしくないワ」とミエが云う。

「葬儀の次は婚礼よ、わたしの出番はまだかしら?」とワガママが云う。

ほむらの心が人形どもを呼び寄せたのではなく、人形どもがほむらを求めたわけでもなかった。

「わたしらのじゃまなんてだれにもさせないよ」とイバリが云う。

「出席のご両親は首だけでいいワネ?」とレイケツが云う。

「もっと楽チンおちゃのこさいさいってわけにはいかないの?どーしてこんなにご大層なの?」とナマケが云う。

人形どもの言葉を超えた物言いは時として挑発的でもあったが、ほむらの心がそれによって乱されることは全くない。

「よくもまあ恥ずかしげもないこと」とネクラが云う。

「それでこそ我等がデキソコナイ様」とウソツキが云う。

「この道こそが我等の道、外れることなどゆるされぬ」とガンコが云う。

彼女達の語らいは、ほむらの本質に近い部分を射抜いたりもしていたのだがそれでも悪魔は微動だにしない。

「悪目立ちはいけませんワ」とオクビョウが云う。

「大事な宝物は秘宝っていうのよ」とヤキモチが云う。

ノロマは何も云わず、薄ら笑いを浮かべている。

「きっともっと良いことがあるわ」とマヌケが云う。

「光輝くところはまぶしすぎて苦手だわ」とヒガミが云う。

いつ果てるともしれぬ人形たちの繰言が、見滝原の外れでひそやかに囁かれていた。

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