いやあ、やってくれましたね。確かにこの展開は予想してませんでしたが。
「なかなか良いネタを提供してくれる」
これが私の第一印象です。
良いネタ、というのは感情を動かされるという意味で。(感情を動かされないものをみてもなんだかなあ、だし。そういう意味でコレは正解だよなあ、とか思うわけですよ。)

自分の感情が動くパターンは、振り返れば
○研ぎ澄まされた台詞回しに出くわした時
とか
○キャラクターの感情を想像してしまう時
とかのパターンが多いんですけど、今回のはちょっと違くてですね、
丁度名瀬さんが死んだすぐ後っていうタイミングでぶっこんできたのが
意表を突かれた感、あります。タイミングの妙。

でここぞとばかり噛みしめてみるわけですよ。昭弘。。

※※※
俺のこれまでの生涯は、ただ「抗う事」と「失う事」でできていた。
確かにラフタと酒を飲んだ時にも言ったが、鉄華団に入ってから少しは自分らしい自分に近づけてきているような気もするが。

かつてヒューマンデブリであった俺は、ただ命をつなぐことで精いっぱいだった。
さっきまで隣にいる奴が仕事の終わりにはあの世に逝っちまったとしても何も感じなくなっていた。
一々何か感じていたら気が変になりそうだったから、もやもやしたら俺はひたすら体を鍛えた。
そうして抗っているうちにいつしか俺は感情を失っていった。

そんな俺が鉄華団に入って、モノとして扱われることがなくなっていくにつれて、少しだけ「自分は今どんな感情でいるのか?」を見つめるようになった。
勿論、それで「抗って」そして「失う」自分の運命に変わりがあるわけではなかったが、ようやく俺は自分の経験した事を自分の事として受け入れることができるようになった。

だから昌弘が死に、アストンが死んだ時それまで蓋をしていた自分の感情が果てしなく溢れ出すのは不思議でもなんでもなかった。ずっと自分で押さえつけてきた自分の怒りと悲しみが、押さえつけられてきた分勢いをつけて外に出ようとするんだ。気が変になりそうだったから、俺は長時間トレーニングルームに鍵をかけて引きこもった。
皮肉なことにそうして俺はますます強くなった。それが俺が得た唯一のものだった。

そんな折、唐突に聞いたんだ。
「ラフタが殺された」と。


もしも人間の運命を決めている神様なんていうものがいるなら、俺は出会った時一言も発さずにこの右の拳でぶんなぐるだろう。

そして襟首をつかんで聞くんだ。
「何故、ラフタを殺したのか?」と。
いや、違うな。そうじゃない。
「何故、俺の運命はこんな風なんだ?」と。

奴らがどうこたえるのか、それが俺にはわかっている。
「お前なら耐えられると思った」
そう言うはずだ。

だからそれを聞いた俺は左の拳を顔面に叩き込んでやるんだ。

よくわからない呟きを続けながらダンベルを上げ下げしていると、この宇宙全体が憎しみの対象になりそうな気がして、俺はダンベルを壁に向かって放り投げた。
そして獣の様に吠えて正気を保った。

指示をくれ、オルガ。
はやく。

※※※
圧倒的な理不尽。

【付記】
この話の後にデレステのMV「あいくるしい」を見ると悲痛さが三倍増しになります。(鬱耐性が強くない人にはおススメできないですけど)